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脳障害を乗り越えて [人間社会]

暗いニュースばかりが先行している世の中だが、本当にうれしいニュースが飛び込んできた。


【オーチャードパーク(米ニューヨーク州)3日AP=共同】米国で、消火活動中の事故で10年近く記憶を失い、妻たちの呼び掛けにも答えなかった消防士の男性が先月30日、突然回復、家族らと会話を始めた。
 脳に損傷を受けた患者が回復する場合は通常2、3年以内、と話すニューヨーク大医療センターのローズ・シャー医師は「10年後という例は聞いたことがない」と驚いている。
 男性は、ニューヨーク州のドナルド・ハーバートさん(43)。1995年12月、民家火災を消火中に、焼け落ちてきた屋根の下敷きになり、救出されるまでの数分間、呼吸ができなかったため脳を損傷。2カ月間の昏睡(こんすい)状態から回復した後も、視力、記憶がほとんど失われ話すこともできない状態が続いていた。

上の記事はURL表記にしようと思ったが、前文をそのまま掲載する。とてもうれしく思う。脳機能が不全になると、なかば「脳死者」扱いされることも少なくない社会となっている。そう、「ドナー」が絡んでくるからだ。臓器は生きている人間から移植するのが一番成功しやすい。だが家族から見れば脳の復帰の可能性が「0」であるとは信じたくあるまい。何しろ本人は目の前で「生きている」からだ。そして今回は信じる心が通じた結果となった。

こうした脳関係の事故の話を聞くと思い出すことがある。19世紀にアメリカの工事現場監督官だったフィニアス・ゲージ氏が事故によって脳の「前頭連合野」に鉄棒が突き刺さってしまった。この前頭連合野は人間の社会性を維持する部位として知られている。以来温厚だった彼の性格は一変し、計画性や感情維持を行うのが難しくなってしまったと言われる。それでも身体機能に全く損傷はなかったようで、脳がその部位によって支配する分野ははっきりわかれているのだと思ったものだ。今では統合失調症(昔でいう精神分裂病)やそう鬱病、パーキンソン病、アルツハイマー等の難病も、それらに影響している脳の部位を特定し治療する技術が開発されているという。新薬の開発も進んでおり、早期の実用化が期待される。

今回の回復劇もこれらの技術の恩恵なのかどうかはわからないが、何にしろ喜ばしい話である。本当にうれしいというより他はない。ご家族の喜びはいかほどだろう。そして同じように脳機能に障害を持つ方達への光明ともなるものだろう。心から共に喜び合いたいと思う。


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のぶ

ごぶさたです。
なんともタイムリーな偶然なのでトラバさせて頂きます。
10年。なんとも気が遠くなる期間です。その間の苦労を思うと涙すら
出てきます。あるんですね。こんな奇跡。
by のぶ (2005-05-05 12:31) 

kyao

人間の可能性には本当に限りがないんだなあと実感させられる出来事でしたね。おそらくは、同じように記憶喪失や植物人間化している方々のご家族やお友達には、きっと大きな希望をもたらしたのではないでしょうか。
この方は、諦めてはいけないと言うことを、身を呈して教えてくださったような気がします。素晴らしいことですよね。(^^)
by kyao (2005-05-05 14:27) 

Lavio

参名学士さん、先ほどは、コメントありがとうございました。
お返しにサイス!を入れた訳ではなく、実は、私も肝臓の病気とメンタルな病気を持っているので、こういう脳の話には非常に興味があります。
ですので、私の本来の興味から言っても、ナイスなのです。本来blogは、Sonyに文句を言う場所ではなく、こういう話題でコミュニケーションの輪を広げていくところだと思う次第です。
私も、うつ病を経験しましたが、現在、うつ状態からは脱しまして、通常の会社勤めをしています。ただ、まだ睡眠障害で悩まされています。まだ精神安定剤と睡眠薬は必須です。今は鬱から躁の状態になっている模様で、脳の中の神経回路がどうなってるのか、自分でも興味があります。
また、寄らせてもらいます、とりあえずご挨拶まで。
by Lavio (2005-05-05 16:50) 

Lavio

参明学士さん、ごめんなさい、名前の字を間違えてしまいました。
平にご容赦の程を、お願いします。
by Lavio (2005-05-05 17:08) 

アキオ

可能性と、希望を持つ事の意味と結果、努力するする意味、
全てにおいて、関西の「引っ越しおばちゃん」よりも力入れて報道すべき事ですよね。。
でも、コウイウのって、、扱い小さくて、そういうとき
マスコミにたいして頭に来たりしてしまう、若いオイラです(*^o^*)
(うそ、大して若くはないけれど)
by アキオ (2005-05-05 18:15) 

サファイヤ

10年とは、驚きです。人間の脳の機能は複雑で、まだ解明されていないことが多いですが、これは奇跡というのでしょか。興味深いですね。人間の可能性というのは、不思議です。
by サファイヤ (2005-05-05 18:44) 

dino-tail

数ヶ月前、まさに「脳死」について深く考える機会があったので、
感慨深いものがありました。
何を優先すべきか…なかなか難しい問題ですよね。
by dino-tail (2005-05-06 07:09) 

参明学士/PlaAri

のぶさん、TBありがとうございます。このような軌跡的出来事をきちんと科学の目から分析してもらって、後世に活かしてもらいたいですね。

kyaoさん、人間の大いなる可能性を再認識することが出来ました。脳科学の進歩も関連しているのでしょう。とにもかくにも「うれしい」の一言ですね。

ようちゃんさん、ご病気との闘い、私には想像がつかないほど大変なことなのだとお察しします。科学で人を救える分野があるのであれば、どんどん技術開発をして人類に貢献してもらいたいと思っています。脳のアプローチから解決できそうな課題は、意外にも多いようなのです。少し先の時代がどうなっているか、心から期待したいですね^^

アキオさん、久しぶりに良いニュースを耳にして元気が出ました~。確かにマスコミの扱いは小さすぎますね。はぁ。

サァファイアさん、現在脳科学は非常にさかんに研究されている分野でして、近い将来は多くの精神的な病にも有効な治療法が確立できるとも伝えられています。その一つの答えだったのかもしれないですね、この回復劇は。すごくうれしく思っています^^。

dino-tailさん、脳死問題、とっても難しい課題を秘めていますね。人類にとっての「正しさ」にも関わってくる重大な問題です。そもそも脳死状態が科学によって解消されるなら、このような難しさを持つ問題からは解放されますね^^。
by 参明学士/PlaAri (2005-05-06 17:33) 

こんにちは~。
私、実は(てか、カミングアウトは記事でかなりしてますが(^^;)
いわゆる『軽度発達障害』です。
たまたま昨日、『見えない障害』ってな感じで記事を書きました。
昨年、色んな脳内の検査をして障害だとわかるまで
どんな薬を処方されても改善しない、重症なうつ病患者扱いでした。
でも、診断が下りてからは、合った薬も見つかり劇的に改善しました。
私みたいな方が、多分たくさんいらっしゃると思われます。
でも、大半の方は気づかずに苦しいまま過ぎてしまうようです。
研究をする学者も診断を下せる医師も少ないのが現状です。
早く、脳内の構造の解析が進むことを望みますね。
by (2005-05-10 23:03) 

参明学士/PlaAri

ひかりこさん、診断の過ち…。そうだったのですか…。確かに診断ミスというか知識不足の医者というか、そういうことが一人の人間を大いに苦しめるものだと痛感します。脳の構造と改善の手法が確立されつつある今、診断をする医者側のスキルアップも確実に必要になってきますよね。
人間に関わることに関しては、十分すぎるほどの配慮を持って当然と思うのです。2010年をめどに脳の治療薬もどんどん登場する予定であると聞いています。一人でも苦しむ人が減ることを願わずにはいられません…。
by 参明学士/PlaAri (2005-05-11 00:23) 

TBさせて頂きました。
医師のスキルアップ、本当に切に望みます。
同時に一般の方の障害に対する認知度も
上がって頂けると大変嬉しいです。
今、当事者が認知度を上げるべく頑張っているのが現状です。
私もこうやって、ブログと言う形式で表現しています。
自分たちのためだけではなく、多くの障害とは知らずに悩んでいる仲間に
自分を知ってもらえる手だてになれたらと思ってます。
>人間に関わることに関しては、
 十分すぎるほどの配慮を持って当然と思うのです。
これ、激しく賛同致します。
by (2005-05-11 09:58) 

参明学士/PlaAri

ひかりこさん、最近思うのですが、もう医師免許を取得して数十年とかになると最新機材を使うこともできないし、導入する気もない。ましてや最新理論なんて受け入れられないなんてケースも続発していると思うのです。これって患者から見れば非常に「分」の悪い話だと思うのですね。
過去の名医が下手をしたら、現代では名医たりえないかも知れない。
最近は特にそんなことを考えています。
そして、鬱病の人を励ましてみたり、精神病を病気扱いしなかったりと、何ともやりきれない社会が出来上がってしまっていますよね。
そうした様々な誤解を解消できる社会システムを政治の力とかで達成してもらいたいですね。元来政治はそうした視線に立たねばならないのですから。
by 参明学士/PlaAri (2005-05-11 17:59) 

そうですね。「分」の悪さはよく感じています。
例えば、最初に何の気無しにかかった医師に障害の知識があったのなら、
私みたいに10数年精神科に掛かるなんてことをしなくても済む気がします。
うつ病は最近認知されてきているので、励ましをしてはいけないことも多少は浸透していますが、私が精神科に通い始めた頃は「怠け病」と罵られました。
そして、精神科に通うこと自体を恥じだと言われました。それは未だにあるようで、私みたいにカミングアウトしている人間は、とても不思議がられます。
政治の力は大いに利用したいですよね。私は、選挙だけは行くようにしています。政治が悪いと文句を言うには、選挙に参加することが前提だと思ってますので。ただ、それを頼める魅力的な政治家が少ないのも事実ですが…。
by (2005-05-11 19:00) 

参明学士/PlaAri

仰られるような事態は相当事実としてあるのだと思います。
精神的な病が最近でこそ認知され始めているとは思いますが、なかなか「理解」まで高まらないというのが残念ですね。
政治に関しては、よく見れば頑張っている人はわかってきます。口だけなのか、法律をきちんと制定しているかどうかもわかってきます。こんな法律も実はあったりします。↓
http://blogs.dion.ne.jp/yamasan/archives/1048663.html
ここでは政治論は避けますが、とにかく政治は「人間のため」になくてはならないですよね。これを外して他に何があるのでしょう。いつもそれを考えてしまいます。一人の人間を大切にするということを、政治は真摯に取り組んでいかねばなりません。
by 参明学士/PlaAri (2005-05-12 00:02) 

あんまり知られていないですよね、この法律。
私は、診断名が適用の範囲なので地元の病院の方で利用してます。
(一ヶ所しか適用されないのです。)
カウンセリングも受けているのでかなり助かっています。
by (2005-05-12 00:35) 

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