できそこないの男たち(福岡伸一) [本ココ!]
『生物と無生物のあいだ』を著したことで知られる分子生物学者の福岡伸一氏による著作である。文章力に定評のある著者だが、本書でもその力が遺憾なく発揮されている。男女の性差が何によって決定付けられるのかを丁寧に説明している。
人間のデフォルトは「女」であること、それをカスタマイズして「男」ができあがることを遺伝子の振舞いを通して解説する。タイトルの「できそこないの男」という表現は、能力や機能としての「できそこない」ではなく、男というものの誕生の経緯が「女のできそこない」であるという意味である。これらの知見は分子生物学の進展なくしては得られぬことばかりである。
<勝負脳>の鍛え方(林成之) [本ココ!]
今回紹介するのは脳外科医である林成之氏の著書、『<勝負脳>の鍛え方』である。林氏はサッカー日本代表監督だったオシム氏が脳卒中で倒れた際に治療にあたったことで知られている。その後の動向が不安視されていた監督だったが、氏の治療の末に日常生活を送るレベルにまで回復しているようだ。
彼は脳外科医としての豊富な臨床体験をもとに、知られざる脳機能の本質について大胆に仮説を立てて持論展開する。もちろんそれは単なる推測を連ねたものではなく、医学的根拠を提示しながら脳が本来持っている力をいかに引き出すかという視点で本書は執筆されている。「勝負脳」というのは著者の造語であるが、社会そのものが「あらゆる分野の戦場」であることを考えるとき、人間の脳はその戦場を生き抜くための勝負を司る存在であるとも言える。脳に内在されていながら我々が取り出しえない「能力」を引き出して、あらゆる戦いを制していく力を「勝負脳」と定義すると言って外れてはいないだろう。
本書は著者としては簡便な表現を使って書いているとのことだが、少々専門用語が飛び交う構成になっており、読み疲れることもあるかもしれない。ともあれ手短に読み手としてのポイントを示してみる。
疾走する精神(茂木健一郎) [本ココ!]
働き方革命(駒崎弘樹) [本ココ!]
働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)
- 作者: 駒崎 弘樹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/05
- メディア: 新書
ここ数年で「ソーシャル・ベンチャー(社会起業)」という語を耳にするようになった。著者の駒崎弘樹氏はその気鋭な企業家の一人という位置づけに当たるようだ。もっとも氏自身は、自ら主宰するNPOを「一零細企業」と呼んでいる。謙遜でもあり、事実でもあるというところであろう。なお、この本の内容はソーシャル・ベンチャーの中身とは特に関連がない。
聖灰の暗号(帚木蓬生)上・下 [本ココ!]
金正日の正体(重村智計) [本ココ!]
- 作者: 重村 智計
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/08/19
- メディア: 新書
脳を活かす勉強法(茂木健一郎) [本ココ!]
人は見た目が9割(竹内一郎) [本ココ!]
本書は近年、大ヒットした新書の一つ。正直に言ってしまえば、「タイトル勝ち」した典型例の本だという以外にさしたる感想もない。
馬上少年過ぐ(司馬遼太郎) [本ココ!]
朝食抜き!ときどき断食!―免疫力・自然治癒力健康法 (渡辺 正) [本ココ!]
興味深い本を読んだのでレビューしたい。参考URLはこちらへ。
朝食抜き!ときどき断食!―免疫力・自然治癒力健康法 (講談社プラスアルファ新書)
- 作者: 渡辺 正
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/12
- メディア: 単行本
ドラゴンボール完全版 第15巻(鳥山明) [本ココ!]
日本兵捕虜は何をしゃべったか(山本武利) [本ココ!]
久々に良質な書を読んだ。『日本兵捕虜は何をしゃべったか』とは帝国主義時代の日本における最前線兵士の内情を分析しようとする者にとって非常に気にかかるタイトルだ。第2次世界大戦に関わる出来事というのはその後の各国のイデオロギーやナショナリズムによってぼやけたり歪んだりして見えやすいが、本書のようなアプローチで追求された「大日本帝国兵士の最前線の姿」は非常に興味深く、またその内容も新鮮かつ鮮烈である。現在では英霊合祀とか靖国参拝問題などで安直な感情論に流されがちな論評も見られるが、そうした認識にも一石を投じることになり得る書である。大戦中の大日本帝国兵士の本当の姿を当時捕虜になった兵士自らが証言している。最前線の兵士の心情を吐露した記録が現存していることに率直に驚いた。それは論評などではなく、「現場の声」そのものである。その記録が現代に生きる我々の参考にすべき内容のものであることは十分に肯定されてしかるべきであろう。