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原因と結果の法則 [思索の散歩道]

「原因」と「結果」の法則

「原因」と「結果」の法則

  • 作者: ジェームズ アレン
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: 単行本

この本が日本で売れるとは思っていなかった。どちらかというと唯物的に物事を捉えがちな国民性であると考えていたからである。しかも短絡的思考に基づく行動原理をもち、長期的視野に立った物事の洞察ができない若者が増えている中でのことなので、なおさら意外である。もちろんそうした若者が読んでいるのかどうかはわからないわけだが…。とにかく現在かなり売れている本なのだそうだ。哲学の結果のような内容である。背表紙を見ると「聖書に次いで一世紀以上ものあいだ多くの人々に読まれ続けている」とある。日本での完訳は初めてなのだそう。「思いが全てを決める」とも書かれており一見、宗教教義の様でもある。哲学と宗教は究極的には意識世界と無意識世界に大別されると私は思うが、本書はそのちょうど中間に位置するといっていいのではないだろうか。

普段は意識しない分野にまで「原因と結果の法則」がある

さて、本書のテーマはタイトルの通り「原因と結果の法則」である。主題は「人間内部の精神がその外界に及ぼす作用」とでもすればよいだろうか。私なりの解釈だが例えば、「ごはんを食べたからおなか一杯になった。」というのは外界が外界に及ぼす影響である。食事→満腹となる。ではこれはどうだろう。「財布を偶然拾った。持ち主が困っているだろうから警察に届けた。すると以前見当たらなくなった大切なものが見つかった。」これは「持ち主が困るから届ける→大切なものの発見」となっているが、客観的に考察すればこれらは関連性のない偶発的な出来事であると捉えられる。しかし、著者のジェームズ・アレンはこの「偶発的な出来事」を必然であると説く。要するに「困っている人を助けよう」という「心の作用」が外界に働きかけて「見当たらなかった大切なもの」を発見させる引き金になったと考えるのである。

悪しき「原因」を改善することが肝要

アレンは読者に対し「原因を改善せよ」と呼びかけている。意識的にせよ無意識的にせよ不純な思いや考えを改善しなくては外界の環境の良化は望めないということらしい。「多くの人間は環境を改善することにはとても意欲的だが、自分自身を改善することはひどく消極的である。」と痛烈である。現在の政界にも言えることであろう。哲学を政治にどう活かすかは私が課題とするところである。政治はある側面では「取引・駆け引きと利害関係の調整」を桧舞台としている事実があるのだが、そうした慣習自体に本質的問題があると考えるならば、哲学のような「キレイゴト」が切り込んでいけるのはその辺りであろうと思う。

「この宇宙を動かしているのは混乱ではなく秩序である。」とのアレンの言葉が真理であるならば、今の政治スタンスは必ず国家の滅亡を招くはずである。いや、政治スタンスだけではあるまい。およそ身の回りの人間関係にこそこの言葉は当てはまる。この「秩序」は「法則」と同義なのである。ますます進む隣人・近所・友人等との希薄な関係。このような社会になったのは、この国の国民が持つ「原因」の儚さの故か。


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zeal

ありがとうございます^^自己啓発系の本等が好きなので^^;
是非、読んでみたいと思います。調べたら。。。
**ナポレオン・ヒル、デール・カーネギー、オグ・マンディーノなど、現代成功哲学の祖たちがもっとも影響を受けた伝説のバイブル**
と、書いてありました^^僕はこれを仕事に生かしてみたいです。
by zeal (2005-01-26 10:51) 

saratia

希薄な関係「原因」のひとつとしてなら、出会ったときの「こんにちは」が活用されなくなったからかなぁ。。とか思うンですが、
政治に関したら「してもらうもの」とか「どうせ、ダメだし」とか思い込んでるとこ、かなぁ。。(ジェームス・アレンを知らんかった(コクハク のは我ながらナサケナイですが「情けは人のためならず」発想や「思いが全てを決める」というスタイルは スキだなぁ。(ノ∀`) )
by saratia (2005-01-26 11:35) 

参明学士/PlaAri

zealさん、こんばんわ!是非ご一読ください。続編が「4」まで出ていますから、その内にここでも所感を書こうかと思っています。人間精神に内在するエネルギーが自分の実際の環境を変えていくという哲学に、賛同を送りたいと思います。

ちあらさん、こんばんわ!やっぱり人間の凄さは「心」にあると思うんです。そして「その人らしさ」も心の発露に他ならない。自分のとる具体的な態度や姿勢も「心」の反映とみていいかと思っています。心の持ちようを「原因」と定義し、法則化したことについて書かれている書物です。平易な文章で書かれているので、随分ウケたのかもしれません。こういう本が売れることはうれしいことだと思います。
by 参明学士/PlaAri (2005-01-27 00:19) 

黄泉若宮

是だけ読むと、仏教みたいじゃ。(今のじゃないよ。)
by 黄泉若宮 (2005-01-27 01:50) 

参明学士/PlaAri

若宮さん、毎度です。仰るとおり仏教に近いですね。これをイギリス人が考えていたことに驚きですがね…。すげぇ。
by 参明学士/PlaAri (2005-01-27 19:09) 

こんにちは、参明学士さん。いつも渋い本の紹介感謝です。
同感しちゃいますね、「心」のあり様が人の生き方と直接的に関与しているところ。僕は、昨年職場の異性との人間関係の崩壊で色々と生活が変わってしまいましたが、当初あった彼女への「恨み」や「辛み」がありましたが、最近になってようやく、問題の根っ子は、彼女ではなく、僕自身の心だったと思えるようになりました。自信過剰までに仕事で誇りを持ち過ぎ、無意識のうちに他人との関係で「驕りと無遠慮」な心が育っていたのだと思います。その「汚れた心」への戒めを受けた。そう思えば、自分を律する心を持ち続けることが大事かなと思っています。また、書店でこの本を探してみます。(木鶏はYo-Sha!の分身です。ご参考までに)
by (2005-01-28 16:30) 

参明学士/PlaAri

木鶏さん、こんばんわ!Yo-Sha!さんの分身ですか?(笑)今後ともよろしくお願い致します。

是非、手に取ってお読みいただければと思います。今流行りの自己啓発コーナーなんかに置かれていますが、私はこの本はある程度の真理をついているように考えています。人類にとって有益であり、哲学の初歩でありながら大事なところをキチンと押さえてあります。いや、初歩じゃなくこれが極みの一部なのかもしれません。お読みになりましたらご感想を頂ければと思います。
職場での彼女との間柄に色々諸事情があったものと思われますが、「原因の改善」は可能だとアレンは説いています。全ては明日のため!頑張ってくださいね!!(^_-)
by 参明学士/PlaAri (2005-01-28 19:21) 

こんばんは。コメントありがとうございます。
抜歯失敗とはお気の毒です。人間て不思議ですよね。身体のちょっとした構成部が噛まれたり、触れられたりしても、敏感に感じるなんて。たかが、歯一本、されど精神的な痛みは計り知れません。どうぞご自愛ください。分身となってこれからは、「木鶏」を中心にBlogでお邪魔します。よろしくお願いします。
by (2005-01-28 22:12) 

run-hirachiko1

そういった本があるとは知りませんでした。法則がある。・・のところに興味わきました。図書館で貸し出しやってるかな~。読みたい気満々です。
by run-hirachiko1 (2005-01-30 11:03) 

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