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あしたのことが、あまりにはっきりわかっていても…。 [思索の散歩道]

2004年12月31日、東京は大雪だった。

「もう今年も終わりなんだな…」と私は歩みを進めていた。

東京らしからぬ視界を埋めるほどの雪が、その身を少し融かしながら地に重なりあっていた。

私は北国の生まれ。特に雪が目新しいわけではなかった。

「今日は寒い、早く帰ろう…。」と、その歩みを速めていた。

「ん…、あれは…??」

一瞬だけ視界に入って、また消えていった「あれ」をもう一度振り返る。

「雪だるま…か?」 私は歩み寄った。

東京で雪だるまとは珍しい。私は恐らく雪に慣れていない子供が喜びにあふれ、はしゃぎながら一生懸命に作ったのではないかと想像をふくらませた。

すぐに後悔の念がわきおこる。「記念に収めるカメラも持っていない」と。

「そうだ、ケータイのカメラがあったな…。それで撮ろう」

光が弱くて上手に撮れない。「ごめん、雪だるま…」と詫びた。

ふと、頭をよぎった。

東京の暖かい気温ではそう長くは持ちこたえられないだろう。

それなのに雪だるまは満面の笑顔を見せていた。

あしたのことが、あまりにはっきりわかっていても…。

「雪だるまや、何でお前さんはそこにいるのかい?明日になったら融けちゃうんだよ…。」と、無意味な問いをした。

答えに窮しても、暗闇の中で雪だるまは笑みを絶やさなかった。

あの日、闇に決して融けなかった「真っ白い雪だるま…」

 

今日は雪だるまに出会った場所に行ってみた。

もう、お前さんは違う人にその満面の笑顔を見せるために行ってしまったんだね。

また、会えるといいな。とってもきれいな顔と心を持ったあの雪だるまに…。


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コメント 7

ひな

なんだか、この記事を読んでまたある患者さんのことが
頭をよぎりました。
記事にして、トラバさせていただきますね。
・・・それにしても色んな方の記事で思い出が蘇ってくる
のがすごく多いです。
by ひな (2005-01-04 07:17) 

run-hirachiko1

雪だるまの写真見に来ました。可愛らしい顔で。よくこんな風につくれたもんです。いったい誰が作ったんだろ。
だるまさん、雪降らないからもうずっと作ってないです。
by run-hirachiko1 (2005-01-04 11:30) 

私もよく雪だるま作りますよ。自然センターの駐車場に。すぐに除雪されて悲しいんですけどね。
by (2005-01-04 19:22) 

寒いからか、今シーズンはまだ作ってませんでした。
さっき外に出てちっちゃいのを3つ作ってきました。
今日は雪が湿ってて作りやすかったけど、なんだかかわいくありません。
参明学士さんの記事を読んでいると歩いていて見つける感じをすごく想像できました!!心がホッコリ、そしてちょっぴり切なくなりました。
by (2005-01-04 22:17) 

参明学士/PlaAri

ひなさん、こんばんわ!!

ブログを拝見しました。朝、コメントを残したように、やっぱり生きる力を振り絞って毎日を過ごしたいと思います。おばあちゃんから学ぶことは大きいですね。

chkoさん、こんばんわ!!

写真を撮るときはケータイの光が弱くてあれが限界でした。でも、あきらめないで残さなきゃと思い、何とかケータイカメラのシャッターを切りました。ぎりぎり雪だるまが確認できるのでホッとしています。

ふじかわさん、こんばんわ!!

雪だるまが除雪されちゃうんですか??それは切ないですね。そんなことされちゃうんですね…。

スナフさん、こんばんわ!!

雪だるまを作ろうとする発想って、年をとっても持っていなくてはいけないのでしょうね。発見した時に「ハッ」と、心が洗われるような気持ちになりました。
このまま、融けてしまうなんて可哀そうだ。でも、どうすることも出来ない…。そんな時にあの笑顔で見つめられました。負けましたよ、本当に。
by 参明学士/PlaAri (2005-01-05 02:06) 

kyao

こんにちはー。久しぶりにお邪魔しました。(^^)
一瞬、雪だるまの顔が心霊写真に見えてしまって「うお」と、ディスプレイから顔を離してしまいました(失礼しましたー)。m(__)m

思えば、雪だるまも人も、何もかも同じですよね。地球や宇宙の年齢に比べれば、本当に瞬きの間しかそこにいない存在。釈迦は以前、恩師に「人は死ぬために生まれてくるのでしょうか」と問いかけたそうです。

私は哲学者でも何かの宗教の信者でもありませんが、「それがここにある」ということには、きっと何か理由があるのだと思います。参明学士さんはじめ、みなさんとこうしてブログを通じて気持ちを伝え合うことが出来るというのは、きっとそこに何かあるんじゃないかと。件の雪だるまにしても、もしかしたら参明学士さんに「忘れ物を届けに来た」のかもしれませんね(笑)。
「もう、お前さんは違う人にその満面の笑顔を見せるために行ってしまったんだね」という一言に、参明学士さんの優しさを知ったような気がします。
by kyao (2005-01-07 19:53) 

参明学士/PlaAri

kyaoさん、こんばんわ!!いらっしゃいませ~。

記事にも書いたとおり、この写真はケータイで撮ったのですがやっぱり光が弱くてこんな感じにしか撮れませんでした…。仰るとおりパッと見、ちょっと怖いかもしれません(苦笑)

>思えば、雪だるまも人も、何もかも同じですよね。

そうですね。本当にそうなんです。ですから私は限りある生をどうやって輝かせるかと言うことに、強い意志を働かせていきたいと思っています。
ところで宇宙の年齢も地球の人類が決めた「一年」という定量から計るものですよね。火星に住んでいればもっと宇宙の年齢は高いでしょうし、冥王星ならもっと宇宙は若い。一年と言うスパンすら相対的なものなんですよね。何だか不思議な気もしますがそういうものですね。

>「それがここにある」ということには、きっと何か理由があるのだと思います。

全くの同感です。何かの理由は目に見えるものばかりではないんですよね。いや、むしろ目に見えない要因の方が人間にとって数が多いはずです。その「何かの理由」の存在が地球の人口63億人の独立した生命尊厳の個性を裏付けているように思います。誰一人として同じ人間がこの地球上にいないのは、それぞれが違う「理由」によって、言い換えれば「原因」によって存在しているからなのでしょうね。

>参明学士さんの優しさを知ったような気がします。

過分のお言葉に汗顔の至りです。ありがとうございます。色々考えてしまうと最後に残ってくるのは、人間としての営みかもしれないなぁとつぶやいている今日この頃です(^_-)
雪だるまは本当に私が忘れていた何かを届けてくれました。雪だるま一つが皆さんと私の交流の架け橋にもなってくれました。感謝は尽きません…。
だから、次にあったらまたお礼を言いたいですね。その都度自分が磨かれていく気もしております。
by 参明学士/PlaAri (2005-01-08 00:18) 

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