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35番しんがり [エッセイ]

 ボクは不思議に思っていたんだ。

 晩御飯の時。

 お魚は食べられてもいいのに、どうして人間は食べられちゃいけないの?

 お母さんは教えてくれた。「お魚は食べられるのが仕事なんだよ。」

 そんなかわいそうな仕事があるんだな…って思った。

 

 

 鉛筆やコップがあるのは分かるよ。でも風ってあるの?

 だって、つかめないんだよ。カメラにも写らない。

 ボクは走る。自転車で。

 風、びゅんびゅん。

 つかめない。

 

 

 

 限られたものって争いのもとだよね。

 小学生。 ボクは野球同好会だったけど、

 ユニフォームの背番号が希望通りにならなかったんだ。

 21番を狙ってた。何となくカッコいい。

 でもジャンケンに負けちゃった。

 どうでもよくなった。

 いっそのこと最後の番号にした。

 好きじゃない友達よりも後ろの番号。

 35番。

 部員数35人。

 ホントはちょっとスネてた。

 いや、だいぶ。

 後に「しんがり」という言葉を覚えたボクは、自分を慰めた。

 35番しんがり。

 大事な役目、最後方。

 皆を守るため。

 

 

 小学校でみんなが注射される日。

 列に並んで待っている。

 ボクの列。

 どんどん前に進んでく。

 隙を見て横の列の一番後ろに逃げる。

 そこもヤバイ。

 もひとつ横の最後尾。

 その列もなくなる頃、そっと教室から逃げる。

 結局ボクは打ってない。

 しんがり、逃走。

 

 

 水色が好きだった。

 絵は何でも水色。

 けど、使いすぎて、卒園の時にはもうインクがなくなった。

 いじけたボクは自分の卒園アルバムの表紙をまっくろに。

 水色じゃなきゃ、なんだっていい。

 表紙を見たお母さんがあぜんとしたと。

 ぼくは怒っていたんだ。

 やり場のない怒りってあれのこと。 

 

 

 お墓参りに行ったよ。

 近くの林でセミが死んでいたんだ。

 ボクはおじいちゃんのお墓の近くにそのセミのお墓を作ったよ。

 けど、それは抜け殻だったんだって。

 よかった、じゃあ、セミは生きていたんだ。

 あ、でも、あの抜け殻はもう使わないんだよね? 

 ふと不安になったよ。

 

 

 遅く帰ったらお母さんが家に鍵をかけて入れてくれないんだ。

 窓から妹を呼んだよ。

 「こっそり開けて」と頼まれると思ったらしい。

 ぼくは言ったんだって。

 「ジャンバー取って」

 

 

 ゲームボーイ。

 初めて買ってもらったゲーム機。

 ファミコン禁止の我が家にも待望のゲーム機。

 イヤホンで音を聞いたら、右が全然聞こえない。

 おかしいおかしいおかしいな。

 不安になって病院へ。

 耳垢いっぱいたまってた。

 悪いのはボクか、両親か。

 今はどっちも聞こえてる。

 

 

 遠足の楽しみ。

 お菓子。

 300円以内のお菓子を持っていく。

 本当の楽しみは遠足では食べきらないで、家にもって帰って食べること。

 普段は買えない豪華なお菓子。

 しゅわしゅわラムネ粉を水に溶かして飲むよ。

 妹にもあげたかな。

 

 

 ホッピング あんまり続くと 友飽きる

 

 

 友達が団地の庭の土の中で蜂の巣を見つけたんだ。

 電話がかかってきた。「学校へ持っていこう」と。

 寒い冬の日。

 面白そうだと掘りに行く。

 結構大きいんだな、蜂の巣って。

 よいしょよいしょと買い物袋につめて学校へ。

 暖かいから蜂が目を覚ましたのか、チラホラ飛び出してくる。

 冬眠からの目覚めって季節じゃないんだね。気温で決まるんだね。

 慌てたボクと友達。

 先生に叱られた。

 喜んでもらえると思ったんだけど。

 

 

 チラシを見る、チラシを見る。

 大安売り、大安売り。

 でも、結局ボクのおこづかいでは買えないんだ。

 

 

 妹の財布を見る。

 100円玉キラリ。

 「うまい棒が10本買えるよ」

 勝手な兄。

 

 

 おばあちゃんの家で。

 ボクは歌をうたったよ。

 「かーらーす、何故鳴くの…」
 「からすの勝手でしょ」

 聞いてたおばあちゃんが涙を流しながら爆笑する。

 「そんなの誰に教わったの?」

 そういえば、あれはテレビで…。

 ボクは笑うおばあちゃんを見ているのが嬉しくて

 何度も何度も繰り返し歌っていたんだ。

 沈む夕日がきれいだったビニールハウスのある庭で。

 

 

 


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kyao

みんな、昔は子供だったんだよね。
思ったとおりに行動して、それを不思議と思わなかった頃のお話。
by kyao (2010-03-30 05:10) 

mana

大人になると「無邪気」の「無」の姿がだんだん薄れちゃうのかな…
by mana (2010-03-30 07:30) 

参明学士

★kyaoさん…子供の頃の思いと、今の思いと、あんまり変わらない気がする私はよく「少年だねぇ」なんて言われています(笑)。
じいさんになっても「少年でいたい」なんて考えてますね。

★manaさん…そうですね、自分が大きくなっていく時にも感じることですが、特に大人と関わっていく度に「邪気」を感じてしまうシーンってありますよね。その意味では子供に囲まれている時、大人は無邪気さを得られるのかもしれません。
by 参明学士 (2010-03-31 02:47) 

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