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地震前兆・予知 [Meishi’s Science Watch]

 中国の大地震が連日の報道により、地震規模・被害が甚大であることが伝えられている。その一方で、地震前兆・予知に関する興味深い報告もあった。

 


 「中国・四川大地震の発生(12日)前に、中国各地でヒキガエルが一斉に移動するなど動物の異常行動(宏観(こうかん)現象)が目撃されていたことが、分かった。阪神大震災(1995年)や台湾中部地震(99年)などでも、宏観現象について報告があり専門家は「地震予知につながる現象。事前に予知して備えれば、減災にも役立つ」などと関心を示している。
 香港紙などによると、四川省綿竹市では今月5日、数十万匹のヒキガエルが一斉に移動するような行動をしたという。また、北京動物園でも揺れが伝わる直前に、チンパンジーが突然奇声を挙げてガラスを割ったとの報道もある。
 宏観現象に詳しい弘原海(わだつみ)清・大阪市立大名誉教授(情報地質学)によると、阪神大震災や台湾中部地震の際にも、いつもいるネズミが姿を消した▽数万羽のスズメの大群が飛んでいた▽大量のミミズが一斉に震源と反対方向に移動していった-などの異常行動が確認されていたという。
 そのうえで、今回の地震について、「異常に気づいた地元住民が当局に伝えたが、何の対応もなかったとの情報もある。事前に備えていれば、大きな被害は避けられたかもしれない」と指摘している。
 一方で弘原海教授は、中国は宏観現象を生かした地震予知の“先進国”とも指摘。75年に遼東半島付近で発生したマグニチュード(M)7・3の海城地震の際に、宏観現象や同半島付近での前震活動などから大地震の発生を予測、政府が発生直前に住民を避難させ人的被害を最小限に食い止めたという。
 翌年の唐山地震(M7・8)では前震活動が少なかったことなどから住民の避難をさせず約24万人ともいわれる死者を出したが、宏観現象は確認されていた。
 弘原海名誉教授は「動物の異常行動は非科学的と見られがちだが、地震予知につながっているのは事実で、日本でも活断層の研究や様々な観測、緊急地震速報と合わせて宏観現象に着目すれば、地震予測につながるのではないか」と話している。」
-産経新聞-

 
 世には容易に理解しがたいことが起きるものである。文中の宏観現象が「非科学的」であるという指摘を受けるとのことだが、「非科学」という定義は人間が現状で用いることの出来る科学的手法による分析の範疇外にあるというだけのことであり、それは真実性と常に連動しているわけではないのである。人間科学の方が未発達であるということはザラにあるのだ。
 世界における動物の異常行動や地震雲の存在などが「天災を予期していた」との事例は枚挙に暇がない。こういうことが分からないのは人間だけなのかもしれない。人類700万年の歴史の中で、天災という自然の異常現象を生物として予知・予感する能力を人間は徐々に失ってきた可能性がある。歴史学者トインビーは「人間が新しい技術により利便性を獲得するとき、その新規性は以前の能力を完全に補完するものではなく、元来の機能を失うという大きな損失を伴う」というようなことを述べているが、人間も文化や技術を発展させてきた一方で失われた能力も少なくないという指摘にはうなづける部分がある。カエルやチンパンジーやスズメには分かって、人間には分からないというのだから、生物というものの奥深さというか神秘性というか、そういうものを感じないわけにはいかない。イルカはテレパシーのようなものを使って仲間と交信しているとも言われるが、人間にもかつてそういう能力はあったのかもしれない。現在でも「虫の知らせ」や「霊感」のようなものを日常的に感じ取る人もいるし、不安がよぎるタイミングで身内に事故があったり、目には見えない気配に敏感な人がいることも知られている。それらの能力は人間がもともと持っていた機能が退化しつつも、いまなお残存しているものであるかもしれない。

 ともあれ、宏観現象については統計学などを用いて高度に分析して欲しいものだ。大地震のような幾万もの生命に関わるような天災に対して人間は基本的に無力である。予測が出来るならば、地震震源からいち早く離れることが何よりも望ましい。そうした天災予知の根拠としては、宏観現象が「ささやかれる」だけではまだまだ役に立たない。もう少し世界から統計を集め、可能な限り科学的分析をかけて一般に説得力を持たせる努力は必要であろう。こうした分野の学問がそれ自体で確立することがあってもおかしくはないかと思われる。脳科学がもてはやされる今日であるが、脳内にこうした事象を感得するような「野」はあるのだろうか。科学の進展により、人間を含めた生物の不可思議さが益々解明されていくことを願ってやまない。そして科学が真に人間を守り、自己を開発していける学問へと昇華することを強く望むものである。

 

Meishi´s 「Science Wacth」 blog


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kyao

昔から「地震はナマズが起こす」と言われてますね(笑)。あの「髭」がどうも敏感らしく、地震などの異変をかなり早く察知するからとか。
動物たちがいろいろな自然災害に対して敏感だといわれていますが、飼い猫や飼い犬たちってどうなんでしょうね。東京の実家でも大阪のうちでも猫飼ってますが、地震が起きる前に騒いだとか、そういうことはなかったかなあ(笑)。どちらかというと、私の方が先に騒いでいたような…。(^^;
by kyao (2008-05-18 08:48) 

arukakat

まぁ、現代の世では「動物が騒いでる?、そんなことで世間を脅かすな!誰が責任とるんだ!」となってしまうので、実際に役に立たないでしょうね・・・。
当たったときだけ「そら見た事か」に近い状態なので、なんともいえません。何も起こらなかったときに動物がヘンな動きをしたところで、誰も何も感じず印象にも残らないので。
とはいえ、他の要素と合わせて考えれば予知できる可能性が無いわけではないので、予算を割く価値はあると思いますね。
お役人さんの無駄遣いより、ちゃんとした研究者に研究費用をあげてもらいたいもんです。
by arukakat (2008-05-18 21:32) 

銀鏡反応

以前、中越地震のあった日の夕刻に、私は都内某所にいました。

その時、空にいる鴉や鳩達が何やら異常に騒いでいるのが印象に残りました。

この日、家に帰って夜を過ごしていた丁度そのとき、あの中越地震が起こったのです。夕刻のあの鴉や鳩達の騒ぎ様は、あれは、きっとこの地震に繋がる異変を感知したからに違いない。そう合点がいきました。

今回のエントリーを拝見するに、お役人たちの「科学における偏見」にはほとほと、呆れます。

今回の四川省大地震で2万以上の人が亡くなったのも、動物達のこうした感知行動を子細に調べていた研究者たちの報告を、当の彼等が信頼する事無く、しょせん「非科学的」で「迷信」じゃないか、といってキチンと取り合わなかったことに、そもそもの元凶があるのではないか。

この動物の宏観現象にしても、脳と心の問題にしても、役人と、いわゆる「タコツボ」に入っている既成の「学者」たちの不勉強なること、日本においてもはなはだしい。

例えば、茂木健一郎氏が自身のライフワークにしている「クオリア」の問題に関する研究は、欧州などではすでにきちんとした研究テーマになっているのに対し、日本の既成学者たち…たとえば「火の玉=プラズマ説」で知られるO.Y.教授らは「クオリアなんていんちき・でたらめ」だと言っているらしい。

そういう学者に限って、ある意味まったく不勉強であるという指摘もされている。

そしてきっと、そんな学者たちとお役人の怠慢の所為で、この島国では若者の科学離れが進んでいる筈だ。


食糧自給率も低くて、資源もないこの国では頭脳だけが頼りだと、茂木博士もご自身が執筆されている雑誌のコラムで言っているというのに。

これからの時代、いまある科学の範疇以外の事でも、きっと科学的に証明されるときがくると仮想するならば、なべての科学者達は自らの怠慢を棄て、今だ明かされぬ脳の領域をも含む「ワンダーゾーン」の解明に、それぞれ真摯に取り組むべきではないか。

そして、お役人もそういう非科学的とされがちな謎の解明に取り組む研究者達の意見に耳を傾け、彼等の為に、また私達庶民の安全、安心で幸福な生活の為に、彼等の知見を活かすことをするべきだ、と思いました。

少々長いコメントで申し訳ありませんでした。
by 銀鏡反応 (2008-05-19 21:10) 

参明学士

★kyaoさん、地震にナマズは有名ですね。犬や猫がどう感じているかもそうなんですが、どうも小動物の反応の方が敏感な例が多そうですね。何か発達した機関でもあるのでしょうか。いや、むしろ未発達だからこそ感じ取るのでしょうかね。気になります。

★arukakatさん、そうなんですよね、結局動物が騒いだから云々なんて言ったところで現状では都市伝説に過ぎない扱いですよね。だからこそ、こういう事例を集積して「学問」に昇華させるべきだと思うんです。

>ちゃんとした研究者に研究費

仰るとおりですよね。ついでに言うと、宇宙開発予算にあれほどの膨大な金を割く前に、地球上のことにはもっと予算投下すべきだと思うんです。地震予知が科学的にあてにならないものなら、こういう宏観現象を分析する部門を持っても良いものと考えます。ま、問題は宏観現象に対して「誰が責任を持つのか」という部分でしょうね。動物が騒いで避難命令→何も起こらず…では、やはり国民も納得しがたいでしょうし。予め宏観現象の分析とは「そういうものだ」と国民理解を押し広げておく以外にはないのでしょうか。

★銀鏡反応さん、長文のコメントありがとうございます。

宏観現象の正当性を確保しづらい現状ではありますが、ともかく、学者の視野の狭さは何とかして欲しいところですよね。よくその世界では言われることですが、学問が高度になればなるほど、とある新説を審査する人の数は非常に限られたものになってきます。そしてそれは審査する人の学識と能力に左右されてしまい、結局日の目を見なかったり、研究の真の価値が発揮されなかったりするという可能性が往々としてあるわけです。
これは非常に問題で、しかも容易に解決しがたい課題であります。学問を審査するにはその系統の学問を知悉している学者の存在が必要でもあるわけで、例えばこうした「宏観現象」を学問として確立することの難しさなんかを強く感じるわけです。実はそういう学問分野は世に隠れているだけで、相当数あったりするんじゃないかとも思ったりします。何とも人類全体にとっては不利益なことですよね。

そういう不合理さを乗り越えて、新規性の強い学問が確立されるためには、人民にも分かりすい予測と結果が示されることが一番でしょう。その意味では宏観現象は、その角度での発展は期せるものもあるものと考えたいところですね。


by 参明学士 (2008-05-20 01:40) 

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