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Nationalの対応 [人間社会]

Nationalが不良暖房機の自主回収に全力を挙げているようだ。これをどのように捉えるか。

近年、企業の不正が明るみに出て国民を怒らせるような対応を取り続けている事は記憶に新しい。まさに今の現実問題である建物強度偽装事件をはじめとして、三菱自動車のリコール隠し、JR西の大事故等、人間生命に関わる事件が頻発してはそれを隠し抜こうとしている。保険会社の保険金未払い事件も記憶に新しい。今回のNationalの暖房機もその欠陥性故に生死に関わる可能性があるという。開発した側としては痛恨の極みであろうが、すでに数名の死者が出ている事実があり放置しておけない大問題であった。国側も異例の通達を出すほどのことである。

さて、企業が不正を隠蔽しようとする昨今、Nationalの問題の受け止め方はいたく謙虚かつ誠意あるものであったと思われる。企業としての売り上げが伸びつつある今、年末の商戦時にすべてのテレビCMを回収告知とお詫びに切り替えた。専用電話回線を敷き、該当機種を5万円で買い取る対策も打ち出した。Yahoo!のトップページでも回収告知が見られ、可能な限りの努力をしているように見受けられる。記者会見でも「生命に関わることを最優先する選択(主旨)」と役員が述べていたのを見た。不良製品を製造した責任は重く、人命を失った損失は計り知れない。だが、この世にあることは全て「先」しかない。どのように失敗に対処するかということが企業にとっても人間にとっても非常に重要なのである。対処の仕方がすなわち責任の取り方である。Nationalは企業イメージが悪化することを躊躇することなく、今回の責任を正面から受け止めようとしているのではないだろうか。

結果、社会でも必要以上の非難・中傷は目立ってはいない。むしろ私の周囲にいる人間と話している限り、「National(松下)の誠意」は好意的に受け止められている。私は評論家の言っているNationalの企業イメージの悪化の予測は今回の同社の対応によって外れるのではないかと思っている。
強度偽装事件の証人喚問で、徹底して自己責任を回避しようとしている姿とは対極に位置しているともいえよう。あの証人喚問を見て好意的に受け止める国民などいないのである。あのような愚劣な責任のなすりつけあいが理解されるはずがなかろう。全体観に立って、偽装物件に関わってしまったことへの責任と誠意の示し方というのがまるで分かっていない。その状態で「国の責任を問う」など、笑止千万と言うものだ。彼らの末路を見つめていけばよい。必ずや滅んでいくに違いない。滅ぶ以外にはないのだ。Nationalが今回の事件で滅ぶかといえば、それはないであろう。次の商品開発への慎重さも加わり、更に良質な製品を世に送り出してくるものと期待できるのである。

どのような問題にしろ、人間がすることには「ミス」はある。過ちも避けては通れない。もちろん企業も人も限りなくミスや失敗をゼロに近づけなくてはならないが、それでもやはり落ち度はあるものだ。そうした時に重要なのはその後の対処である。それ次第で企業も人もどれほどの存在価値があるものか判断されてしまうのだ。
金を確保しようとするあまりに不正を隠した連中を見るがいい。全て破産、崩壊、滅亡の道を突き進んでいるではないか。偽装問題ですぐに倒産したのは木村建設であった。従業員も解雇。その生活もメチャクチャになったことであろう。設計士の姉歯氏は資格剥奪、今後はどうやって生きていくのか。ほぼ生殺し状態で人生を送らねばなるまい。ヒューザーの小嶋氏も業界での信頼はもはや勝ち得ようもないし、住民との交渉で破産するかほとんどの財産を失うだろう。総合経営研究所などはその子会社である平成設計ごと吹っ飛ぶに違いない。従業員もその家族もとんだとばっちりを受けたものだ。
「鉄筋を減らして、浮いた金をふところへ」の思想が何を生んだか。金を生むどころか、破産・倒産の大地獄。ましてや善意の第3者である「不動産の買い主」に甚大な損害を与え、その人生さえ狂わせてしまっているではないか。鉄筋をちょろまかす行為がこれほどまでに大問題になっているのだ。ましてやこの問題に公的資金の投入である。これは国民の税金から賄われるのだ。「不正に利益をひねり出すために、国家・国民に大損害を与えた」責任をどう感じ、どう説明し、どう対処するのか。まさに連中の人間性が問われると言って過言ではない。国会で責任のなすりつけあいなど愚かな行動を取っている場合ではないのだ。

そうした視点から見るとNationalの対応は被害を最小限に食い止める努力も見受けられ、欠陥の責任を部品会社や組立工場の責任などにせず全面的に負い、買取条件を定めユーザーの窓口を開き、莫大な広告費と商業的・機会時期的チャンスを今回の問題対処のために全面的に変更・対応し投下したスタンスは、「その後の対処」としては評価するに値するものと考えられる。
「人ありて企業あり、企業なくとも人はある」のだから、こうした人間に対する誠意ある対応を心掛ける企業は存続していくだろうし、今後、良質な製品を社会に送り続けることで長い時間をかけてでも名誉回復してもらいたいと素直に思えるのは私だけではないのではないだろうか。


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otsubone

初めまして。
検索してこのブログを発見!読ませていただきました。
松下がんばってますよね。これで被害にあう方がいなくなるといいですよね。
また寄らせていただきます!
ではでは。
http://r-bl.com/?na
by otsubone (2005-12-20 11:55) 

如月

問題の暖房器具、昔実家にあったものと似ていたので、CMを見てビックリしました。もうその暖房機はないのでナショナルにどうこう・・・っということはないのですが、CMを見るとナショナルは誠意のある対応してるなぁと思います。確かに危険な暖房器具は問題ですが、それを隠さず被害を最小限にしようとする企業の姿勢は、良い印象をあたえます。
どっかの不動産会社のような悪い印象は受けませんね。
by 如月 (2005-12-20 13:33) 

のぶ

プロは「おかねをかせぐコト」と同義になって久しいですね。
もーひとつ、「仕事に責任を持つ」とゆーのが忘れられてる
気がします。
by のぶ (2005-12-20 17:15) 

ご無沙汰しています。松下のこの件つながりでTBさせてください。
by (2005-12-20 17:45) 

銀鏡反応

明士さん、こんにちは。
今回の不良暖房機の件での、Nationalの対応はまさに誠意に満ち、倫理に則った対応といえましょう。今問題の建築強度偽装問題に関わった諸々の連中のそれとは天地雲泥の差!
今回のNationalのように自社の製品によって死者が出るような事故が起こったら、企業イメージダウンも覚悟の上で、まさに捨て身で、誠意あふれる対応をとる企業こそが、民衆に末長く支持されるであろうことは絶対に間違い有りません。
この記事をTBさせていただきたく思います。
by 銀鏡反応 (2005-12-20 18:22) 

りんたろ

週末、ショッピングセンターの出口で声をかけられました。雪の降る日の寒い場所で、不良暖房機について使ってませんか、使っている人を知りませんか、情報をください、と熱心に話しかけられました。思わず「ご苦労様です」と声をかけました。自社製品に対する責任感!大切なことですね。
by りんたろ (2005-12-20 18:31) 

kyao

申し訳ありませが、今回のこの事件について、私は明士さんが仰るような良心的な見方が出来ません。
この事件、遡れば11ヶ月前に福島で小学生の男の子が死亡すると言うことをきっかけに、販売店側から「商品に欠陥がある」と何度も指摘されたにもかかわらず、松下は「回収の必要なし」「商品の欠陥ではない」として、新聞などで注意をするようにという広告文の掲載ならび修理しか行ってきませんでした。
その後、度重なる事故に経済産業省が異例の緊急命令を出した直後、修理したはずの同ストーブで山形市の男性が意識不明の重体となっています。
正直申し上げて、様々な方面から危険が指摘されていたにもかかわらず、それを軽視していた松下の姿勢を考えるに、今行われているCMや新聞広告の掲載は当然のことであり、死者まで出すに至った事故の責任は極めて重大だと考えます。
明士さんが仰るように、人間誰しも間違いは犯すものです。ですから、その責を自ら認めると共にその責任の所在を明らかにするといった行為が必要なのではないでしょうか。
現在のPL法では、商品の欠陥があるとメーカーに認めさせるためには、消費者自らがその欠陥を証明しなければなりません。それらもふまえて、メーカーにはしっかりとした責任を取らせなければいけないと私は考えます。
失礼しました。m(__)m
by kyao (2005-12-20 18:37) 

カテキン

少し対応が遅かったという気がします。
問題のパイプも以前から実際に点検していた販売店の方が見つけ、松下側に報告したらしいんですが取り合ってもらなかった・・・・。
現在は頑張っているだけに、対応が遅れたことがとても残念ですね。
by カテキン (2005-12-20 23:36) 

Gamaoyabeeeen

こんばんは。
私は「買取額5万円」にびっくりしました。
15万台のうち既に3万台を5万円で買い取りしたそうですね。
全数買い取るつもりだったとすれば、松下は75億円の金を用意していたことになりますし、これに加え、謝罪広告料も・・・。
不祥事のリカバリも財力あればこそだと改めて松下の財力に感心しました。
by Gamaoyabeeeen (2005-12-21 01:06) 

まいらいふ

こんにちは。
私は松下が心から反省しているとは思ってません。
本当ならば男児が死亡した直後に今回の様な対応をしなければならなかったと思います。しかし、松下が行ったのは(原則部品交換の)無料点検キャンペーンと称するヤミ修理。まともに対応を始めたのは、緊急命令が出た後・・・。とても誠意があるとは思えません。
by まいらいふ (2005-12-21 14:54) 

参明学士/PlaAri

★otsuboneさん、松下の誠意をどう捉えるか。なかなか議論も膨らんでいきそうですが、某業者のように何の手も打たないほどの愚かさはないと認識しています。

★如月さん、何より驚いたのはCMで「死亡する可能性」にまで言及している点ですね。かなりの思い切った内容だと思っています。最近の企業としては稀に見る対応と言えるのではないかなと思っています。某不動産会社とは比較になりませんね^^;

★のぶさん、今回の対応はプロ意識を見ることが出来たのではないかと思っています。

★yutakamiさん、TBありがとうございます。後ほど拝見させていただきますね。

★銀鏡反応さん、TBありがとうございます。今回の松下の対応は時期に関する議論はありますが、「松下総体としての受け止め」が見られることには着目したいですね。どこかに責任をなげたりしないスタンスは当たり前なのかもしれませんが、ここ最近の企業の不祥事の責任の取り方とは一線を隔していると思われます。完全な対応は無理とは言え、それに取り組んで行くスタンスを確認することができますね。

★りんたろさん、そのエピソードは心打たれるものありますね。松下側も対応に手を抜く気はないと伝わってくるように思えます。
ミスのない世界はありませんが、やはり重要なのはそれに気付いた時に迅速に対応をしていくという「その後」なのだと思っています。

★kyaoさん、ご意見ありがとうございます。申し訳なくなどありませんよ^^確かにご指摘の箇所は問題が残っているところなんですよね。
時期・対応の件で見ると松下側の肩を持つわけではありませんが、初回の事故の時にはもちろん警察が現場検証・原因究明に当たりました。それに数ヶ月を擁しています。謹告(リコール)が出されるのに時間を要したのはそうした理由です。それまではそのような大きな事故が起こっていなかったのも油断の原因でしょう。警察による事故の調査結果は品物そのもが経年劣化している(ホース部分等)ことと、設置されていた家の外部に突出している部分(吸排気筒)の「曲がりと塞がり」が見られたこともあり、一酸化炭素中毒を引き起こしたものと推定されたようです。警察もその物自体を松下側には渡さないために、松下側の原因究明にも遅れ・見落としが出たことは間違いないようです。当然、ホースの経年劣化は事故懸案として上がり、謹告(リコール)の形をとって対応したわけです。しかしそれは結果としてみれば「利用者の隅々」にまで認識されるようなものではなく、新たな事故を生んでしまいました。これを重く見た経済産業省は緊急命令を発動し、松下側も責任を回避せず(当たり前ですが)に今回の大規模な対応となったわけです。販売店側の指摘云々については、事実であれば重過失につながるわけですから、その責任と今後の対応をどうするかは厳しく見つめなおさねばならないと思います。現場の声は何よりリアルに響いてきますし、創業者松下幸之助氏はそれを何より大切にしていたはずですから。
整理すると1月から4月の間のリコール以前には正確な事故原因判断が出来ていなかったこと。リコール後の告知が利用者に行き渡らなかったこと。それに対する対応に甘さがあったことは確実と思われます。現在も松下はこの責任について回避することなく、謝罪の意を表しています。
記事中にも書きましたが、私は不祥事にとどまらず世の出来事全てにおいて「この先の対応をどうするのか」に着目しています。人も社会も「この先」しかないからです。ミスのない人も企業もありません。松下は自社の対応が遅くなったことで被害者が拡大した瑕疵を率直に認め、現在のような対処を行っています。企業や人としての「当たり前」が損なわれている現代において、松下が現在行っているこうした「本来当たり前の対応」に悪い気はしていないというのが私の思いです。もちろん、「もっと早くやれよ」という意識はぬぐいようもありませんけれどね…。

★shinshinさん、仰るとおりですね。現場の販売店の声が上層部に届きにくいシステムであることが今回分かった以上、きちんとした形のシステムを作っていく必要がありますね。

★がま親分さん、松下の対策費用は100億を優に超えるのではないでしょうか。人命の尊さが軽んじられる現代において、少なくとも「全く誠意を感じない対応」であるとは私は思っておりません。財力あっての対応か、人命重視の対応か、企業の品格が問われる事件でしたね。

★まいらいふさん、経緯に関してはkyaoさんへのコメントで記したような流れです。決してヤミ修理ではありません。ただ、その告知状況は国民の隅々にまで行き渡るものであったかというとそうではなかったと同社も認めるところです。告知が行き渡らなければ「ヤミ」と判断されてもやむを得ない部分もあるでしょうけれど…。
ともあれ様々な状況が重なったとはいえ、現在の対応は必死そのものと見受けられます。今後の展開がどうなるか注目されますね。
by 参明学士/PlaAri (2005-12-21 18:31) 

オサルノカゴヤ

CMをみるたびに痛々しい気持ちになります。
企業としてはあたりまえの対応ですが、
開発者や当事者はほんとつらいんじゃないかと。
ひとを傷つける商品を作ろうなんて
決して考えてなかったはずですからね。。。
(話題の不動産関係者はどうかわかりませんが・・・)
by オサルノカゴヤ (2005-12-21 23:02) 

参明学士/PlaAri

★オサルノカゴヤさん、もうかなり前の製品で関わった人物も社内にどれくらいいるかどうかは分かりませんが、全社を挙げて対応しているスタンスは見るべきところはあると思っています。
人間の命が失われたことは真に遺憾ですが、やはりそれでも重要なのはその後の対応ということになるはずですから。
by 参明学士/PlaAri (2005-12-22 04:27) 

まいけるさん

企業コンプライアンスがちゃんと機能している証拠ですね。
松下の好感度は下がりませんが、株価はどうなんでしょう?。
でも、本来なら商品CMを流すべき所を、例のCMオンリーで対処するのはかなり勇気が要ったはず。
以前、アメリカで『タイレノール事件』がありましたのをご存知でしょうか?。ソレに通ずる物を感じます。
by まいけるさん (2005-12-22 22:44) 

ヤク

昨夜調べごとがあってヤ○ダ電機のHPを見ていたら
HITACHIの洗濯乾燥機で電熱線の部分から発火して火事が起ったから対象の型のひとは修理を依頼してくださいというのが書いてあり
しかもうちの洗濯乾燥機もその対象に入ってました。
とりあえず今日時間になったら電話しますが、今回こうして偶然このことを知ることが出来たけど
HP見てなければずっと知らないままになっていたかも…
それこそ死傷者が出てから焦ってCMとかで流すよりもそれ以前に
異常が見つかった時点で多くの人の目に付く情報提供をお願いしたいですよね。
家電って誰が何を買ったかなんてわからないから買った人の耳にちゃんと情報が入るかどうかわからないし難しいですね…
ストーブに関するCMを見て思うけどやはりテレビの力は大きいなぁと実感します。
by ヤク (2005-12-23 07:24) 

参明学士/PlaAri

★まいけるさん(さん)、タイレノール事件、存じ上げませんでした。今度調べてみようと思います。
現在の松下の対応にはとにかく「必死さ」が伝わってくるように思います。結局人間の対応なわけですから、そうした誠意が重要視されるわけですよね。

★ヤクさん、その乾燥機の件はヤフーかどこかのトピックスで上がっていました。そういうのを目にする人はほとんどいないはずですものね。発火して火事って、かなりの大事故に繋がりかねないものですね。情報提供へのスタンスも企業の質を測る尺度でしょうね。今回の松下の件でそう思いました。
修理、早めに出してくださいね。
by 参明学士/PlaAri (2005-12-23 17:58) 

norinori

nice!だけ押して、コメントをしていなかったので、すみません。
松下の今回の対応については、私も誠実さを感じます。
これでもかと言うぐらい、不具合に関するCMを打っていましたし、ヤフーでもすぐ気がつくところに出ていましたね。
なんとかして、不具合をみんなに知らせて修理したいという思いが
伝わってきます。
ただ、kyaoさんがおっしゃっていますが、今回のことで死亡者や意識不明の重体の方がいるのも事実。人の命が不具合によって、奪われていることは重く受け止めなければなりません。
しかし最近の不祥事のあったいくつかの企業と比べて、したことは悪いけれども、なんとか最小限に食い止めようとする松下の姿勢はよく伝わります。
松下の今回のひたむきな姿勢が企業の危機管理を考えるうえで、いい指針になればいいという思いがしてなりません。
by norinori (2005-12-23 22:51) 

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