セミのお墓 [明士の日々]
とっても暖かくて気持ち良かった日。
私は広大な墓園の敷地を駆け回っていた。
そこに立っていたたくさんの木々。
その内の一本の木にセミがとまっていた。
でも、どういうわけか全然鳴かないし、動かないんだ。
少年は不思議に思って近づいてみた。
息をかけてみた。「動かない…。」
ちょっと触ってみた。「動かない…。」
悲しくなった。
「そうだ、ここはお墓だから僕がセミのお墓を作ってあげよう」
少年はせっせとその辺りの土を掘り、そのセミをねんごろに葬った。
「セミさんが じょうぶつ しますように…。」
どこからか、木の枝を見つけてきて、塔婆のようにして立てた。
覚えてはいないが、少年はきっと手も合わせたことだろう。
そのことを誰だったろうか、親族に話をした。
その人が笑顔を浮かべながら言った。
「それはね、きっと、セミの抜け殻だよ。偉いね、お墓作ったの?」と。
少年はとてもうれしかった。セミは死んではいなかったのだ。
ちょっぴり、間違えた自分に恥ずかしさもこもってはいたけれど…。
そのお墓、今はもうないだろうな…。
かくして少年の作った「セミの抜け殻のお墓」は、これからもずっと心に刻み込まれる思い出となるに違いない。
誰もが夏の日に遭遇する動かない蝉の姿。
それが仮令(たとえ)抜け殻と知っても、
その少年にとっては命のかけがえのなさを知る、
素晴らしい、美しい、そしてせつない体験となったことでしょう。
蝉のお墓を作ってあげた思い出は、
あなたにとっては如何なる宝にもまさるこの上ない心の宝と
なっているにちがいないと思います。
by 銀鏡反応 (2005-05-26 19:10)
いいぞいいぞぉ、少年!!
こういう想いはいつまでも忘れずに。
by しんたろ (2005-05-26 19:51)
うるうる(;´▽`A``
by アキオ (2005-05-26 20:12)
感受性が豊かですね。
そういう心のゆとり、少年だから持ち合わせる心。
一生失いたくないものですね。
by ブル (2005-05-26 21:53)
幽霊を信じる人は余りいません。
ですが死んだ人を弔い、墓を立てない人はいません。
つまり、弔う側がその者の今までの生を証明する儀式なのです。
少年は抜け殻にも命の温もりを感じる事の出来る人間なのでしょうね。
自分は、たくさん集めてまとめて潰してました・・・・・・台無しだ(泣)。
by 空羅 (2005-05-26 23:07)
優しい人は愛しい人!!!
by fromTheALPS (2005-05-27 01:53)
銀鏡反応さん、表現しがたい「懐かしさ」をもって、この思い出に接しているところです。あのような、純粋無垢な心を今でも持ち続けていられるかどうか心配なところです(涙)
しんたろさん、まさに少年だったなぁと思うんです。あの頃。
アキオさん、当時を懐かしく思い返して書いてみました。
ブルさん、こういった心を今でも持ち続けていられるかどうか心配しています。そういう少年だったこと自体は誇りに思いたいです。
空羅さん、そうですね。墓を立てるのは一つの儀式なのでしょうね。そこに少年は純粋さを込めていたように感じます。
ハイジさん、はは^^。ありがとうございます。今でもやさしいかどうかは疑問ですが…(笑)
by 参明学士/PlaAri (2005-05-27 11:53)
土があったからお墓が作れたんですね。昔、飼っていた金魚やハムスターが死ぬと土に埋めて木の枝やお花を飾ったことを思い出しました。
by barbie (2005-05-27 13:12)
barbieさん、あの墓園は木々も茂っていたので土もあったんだと思います。無邪気にお墓を作る自分をアバウトながらも覚えています。そして、忘れないと思います。
by 参明学士/PlaAri (2005-05-28 12:51)