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心から悔いていること [明士の日々]

暖かくなる季節に入ってくると、どうしても忘れられない出来事を想起してしまう。このようなことをblogで書くのはどうかなとも思うが、自分の記憶の整理と私が思索する習慣がついたきっかけを忘れないために書き記しておきたい。

あれは小学校5年くらいだったろうか。市の行事で「少年自然の家」で宿泊するというイベントがあった。これに参加した時のことである。
夏休みの時期に2泊3日ほどで山の中のコテージのようなところに泊まり、「自然に触れて人間としての経験を積もう」というのが主旨だったように思う。数十名ほどの参加者がいたと記憶している。
人間が集まればどういうわけか、力関係が認識され序列が出来てしまうものだ。小学生といえども状況はさほど変わらない。
あの時は6年生の恰幅のいい少年(ジャイアンを想像するとわかりやすい)が、リーダー格になっていた。
山を散策するというプログラムの時に、彼が「たくさんの昆虫を集めたヤツが偉い」というルールを作った。我々はとにかくその意に沿おうとして、虫除けスプレーを手に山に飛び出していったのだ。全く無邪気なものである。そしてリーダーに集めた昆虫を見せて「ほめてもらう」ことを純粋に期待していたのであった。そんなメンバーの中に当然私の姿もあったのである。ところが、私はリーダーから叱責を受けることとなった。

私は他の誰も取れないものを取ろうと考えて、大物を狙っていた。そのターゲットになったのが「セミ」である。木に止まっているところを慎重に近づいて、手持ちの虫除けスプレーを全開で吹き付けた。セミはもがいた後、地上に落下した。まさに虫の息だった。私はその後、更にとどめを刺す為に虫除けスプレーを大量に噴射した。セミはその時に確実に息絶えたのだ。
「これは大物が取れたぞ!」と、意気軒昂にそのリーダーのところへ持っていった。私としてはさぞかし褒められるだろうと思っており、胸を弾ませていたのだ。しかし、リーダーの反応は私の想像とは全く逆の態度であった。

「お前、セミを取ったのか…。知っているか?セミは何年も地中で成長してやっと外にでて、ほんの少しの間だけ鳴いて一生を終えるんだ。それを殺すなんて…。」と、言われたのだ。愕然とした。リーダーも私も限りなくブルーになってしまったのだ。リーダーはリーダーで、自分のせいだとも思ったのかもしれない。リーダーがどう思っていたのかは、今となってはわからない。

だが、私はこれをきっかけに「生命」というものに関心を持ち始めたのである。命とは、時間とは、虫と人間の生命の違いとは?
そして、心から悔いた。セミに申し訳なかったと。今も虫除けスプレーをかけられてもがいていたセミの姿が脳裏から離れない。セミの数年間の努力を私が奪い去ってしまった事実。私は確実にあの事件があってから変わった。確かに私の内部で大きな変化があったのだ。

セミがその身を挺して教えてくれたこと。今も私の中に生き続けている。自分以外の誰かを大切にすること。少なくとも、そう心がけること。考えること。それを教えてくれたのである。私は一生涯、この道を行こうと思っている。


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コメント 20

子どもってこうやって色々感じて 大人になっていくんですよね。
きっと誰にでも似たような経験ありますね。
よいお話を読ませてもらいました。
by (2005-04-22 09:41) 

kyao

叱責を受けたこと。そしてそれによって命の大切さを思い知らされたこと。どちらもとても大切なことだと思います。それを教えてくれたお友達と、そう言う機会に参明学士さんが恵まれたことに改めて感謝ですね。
きっと今、幾何級数的に増えている猟奇的犯罪には、こういう部分が欠如しているのでしょう。自分の命も他の命も同じなのだという想像力とともに。
今回は、そのお友達にnice!を差し上げます。きっと、今の参明学士さんがいらっしゃるのは、その人のおかげだと思うから。(^^)
by kyao (2005-04-22 10:14) 

五分なのかどうかはわかりませんが、明士さんの中にその魂は確実に宿ったのですね。
虫除けスプレーを大量噴射した豪快さと、そのあとブルーになってしまった繊細さが素直な子ども時代だからこそ出来る、純粋で貴重なものに思えました。
by (2005-04-22 10:19) 

のぶ

いいジャイアンでよかったですね。
きっと映画版(笑)
by のぶ (2005-04-22 11:00) 

まさ

この文章、好きだなぁ。

でも虫除けスプレーで捕るってのが、僕にとっては斬新。っていうか虫捕りは生きたままが基本だったので・・。(まあ、虫捕り網がないと厳しいですがね。)

子供には、こういう風に痛みを知る機会が必要ですよね。
いい話、ありがとうございます。
by まさ (2005-04-22 12:42) 

hi2z-to-39la_vvv

友に、虫にも人と同じ命があるようにモノにだって命はある、といわれました。
それからモノがなかなか捨てられない人間になりまして(汗)
人間の命だけ悲しんで動物、虫をないがしろにしてしまう人をみるとゾッとします。その人には命という重みがわかっていないんだなぁと。
それを小学生の時に学んだ明士さんは素晴らしいと思いました!
by hi2z-to-39la_vvv (2005-04-22 13:04) 

ヤク

貫徹明けでnice押したまま眠りについてしまいました。汗

子供のころって大人は考えないようないろんな経験から学んでいく。
参明学士さんもこの経験によって大事なことをより深く胸に刻めたんですね^^

イマドキはこういった経験する機会も減り子供たちに命を教えるのが難しいかもしれないですね。
by ヤク (2005-04-22 13:11) 

ぼうずオヤジ

子供って大人から見ると残酷な事をするときありますね。で、そこから学んでいくのでしょうけど。
最近のニュースを見ていると、痛みが分からないというか、こういう経験をしないまま育ってしまったのではないか・・と思われる事件が多いような気がします。
by ぼうずオヤジ (2005-04-22 13:23) 

fromTheALPS

明士さんの優しさがPCのこちら側にまで伝わってきます。
素晴らしいですね。
by fromTheALPS (2005-04-22 17:30) 

GEN11

参明学士さんの優しさと強さの原点を見た気がしました。
今の参明学士さんを見て、このセミは喜んでいると思いますよ。
by GEN11 (2005-04-22 21:49) 

サファイヤ

こういう経験、私にもあります。昆虫ではありませんが、飼っていた鳥を死なせてしまったことがあります。生き物の「命」を失うことによって、人間はいろいろなことを学ぶのですよね。
by サファイヤ (2005-04-22 23:21) 

どらとら

こんにちは。そうですね、命って大切ですよね。仕事柄、毎日のように動物実験ばかりしているので、本当に身に沁みます。世の中に、命の大切さを認識する人が増えますように。そして安易に自殺する人が減りますように。
by どらとら (2005-04-23 02:56) 

dino-tail

子どもの時って、結構残酷な事してますよね。でも、それでいいと思います。
その上に、「命の尊さ」を学べるのだと思います。
私も、小さいとき右手にギンヤンマ、左手にアキアカネ、
後手で友達と喋っていたら、
左手には頭のないアキアカネが残って…という原体験を持っています。
by dino-tail (2005-04-23 07:31) 

私も子供の頃、虫に対して同じようなこと、しかもかなり残酷なことをして、
友達に激しく叱責されたのを思い出しました。私とって貴重な経験でした。
久しぶりに、いろんなことを学びそして反省する心を思い出させていただいて感謝です。
by (2005-04-23 09:20) 

そうでしたか、明士さんが持つ優しさの「原因」は「セミ」だったのですね。
人に忠告することって、勇気が要るんだと実感しています。相手のためにと思うだけではダメで、自分が忠告できる資格があるのかを自問したりしています。
今朝、自宅の庭掃除をして、毛虫を一匹殺しました。合掌
by (2005-04-23 11:42) 

junper

そう、僕も疑問なんです。
>命とは、時間とは、虫と人間の生命の違いとは?
セミって5年とかずっと地中にいて、たった1日(くらい)外に出てきて、泣きまくって命を散らすわけじゃないですか。それって何の意味がある?って思うんです。と同時に人間の命の重さって何だ?って。
同列に語らないのは自由だけど、それは答えになっていない、単なる解釈ですよね。うーん、不思議だ。
by junper (2005-04-23 12:05) 

空羅

事の善悪はさて置き結果的には良い経験かと、子供同士のやり取りは、自分の世界と相手の世界の貰い合い、叱った方も叱られた方も両方の世界が満たされますから。 自分の世界がある程度満たされないと価値観自体が育ちませんしね。
by 空羅 (2005-04-23 19:12) 

参明学士/PlaAri

すずめさん、思い返すと無邪気だったなと感じます。あのことは未だに脳裏に残って離れないですね。本当に無邪気でした。後先考えることなく。

kyaoさん、この事件は確かに私の転機となりました。あの時のリーダーはあの場限りの知人でしたが、与えてくれた影響力は大きいと感じています。その意味で感謝ですね。子供達が命に対する疑問を持つ機会は確実に減っていますよね。そうしたことの積み重ねが現在の社会を作っている要因の一部になっていると思います。

スナさん、まったく後のことなんて考えないでスプレーを使っていました。とっても悔いています。無邪気さが許されない瞬間もあるなって思うんです。うまく言葉にできないですけれど…。

のぶさん、そうですね。あの3日間限りの友人でしたが、与えてくれた影響力は少なくないですね。

まささん、あの時どうして虫除けスプレーを使ったのかどうしても思い出せないんですよね。きっと、虫を標本みたくして持っていけば褒めてもらえたのかなぁと思うんですが、イマイチはっきりしません。どうも、その後の痛みの方が私には強く残っておりまして。あれ以来私の中で何かが変わりましたね。

39laさん、人間以外の命って何だろう?って考えると悩みますよね。魚や植物は食べるために獲ったりしてもいいのだろうか?と。小さい頃からの変わらない思索の旅なんです。

ヤクさん、あの宿泊研修は私にとって確かになによりも貴重な研修になりました。自然を感じたり見たりすることを一段階飛び越えた大きな収穫を得たように思います。大きな痛みと引き換えに。

ぼうずオヤジさん、子供の時って何が残酷なのかをあんまり認識していないから、できちゃうこともあるのでしょうね。あのリーダーが教えてくれたことは、とても私一人では気付くことが出来なかったことですから、感謝しております。

ハイジさん、いえいえ、優しいなんてことはありませんよ。ごくごく普通の一般人です。当たり前と正しさを求める一般人ですよ^^

GEN11さん、あのセミは今、私を褒めてくれるでしょうか?ちょっとだけ考えてしまいますね。命の価値について教えてくれたセミには感謝です。

サァファイアさん、飼っている動物の命も同様にそういったことを教えてくれそうですね。そういった学びの機会をもっと教育の中にも作っていかなくてはいけないのかもしれないですね。

どらどらさん、お仕事柄動物に携わるのですか…。お辛いこともたくさんあることだと思います。代替物の存在しない唯一の実在。それが生命ですものね。その価値をきちんと認識してもらいたいと私も思います。

dino-tailさん、そうでしたか。仰るような原体験はきっと人生で忘れることのできないものですよね。私もこの体験を背負って人生を生きていかねばならないようです。

springsnowさん、家の周りのアリの巣を攻めていったりしたことを思い出します。アリの巣を駆除することが良いとか悪いとかじゃなくて、命の何たるかを考えながら行っていたなと思います。叱責してくれた友人は、とっても貴重な存在ですよね。

木鶏さん、私は自分では優しいと思ってはいないのですが、思索する中でどうしても突き当たる悩みに対して「あきらめない」という意思だけは持っているつもりです。何か発言をする時は、相手の話をよく聞いてから…を心がけています。悩みや不満は一様ではないし、解決手段もやはり多様だと思うからです。でも、相手にとって価値のある言葉を発せられる自分であるように、日々精進していきたいですね。

junperさん、命の問題の難しさはそこにありますよね。解釈問題に落ち着くことも間違いではなさそうですが、正しいとも感じない。未だに考え続けている大テーマです。

空羅さん、結果的には私にとって大きなターニングポイントになったと思っています。叱った彼がどのように判断したかはわかりませんが、きっと思うところはあったと感じます。虫取りを指示したリーダーである自分の責任も幾ばくかは捉えていたことと思っています。
by 参明学士/PlaAri (2005-04-24 14:06) 

shirogane-kagami

こんにちは。
蝉が命を落としてまで教えてくれた命の大切さ…。明士さんにとっては、このことが、本当に得がたい経験になったと思います。明士さんを叱ってくれたリーダーも、自分自身の責任と共に、命の大切さをとても痛感していたのでしょう。
子供時代に生命というものの価値を思い知らされる事柄を体験すると、その子供は将来、猟奇的な殺人事件を起こしたり、他社の悪口をネットで展開し、その相手を傷つけたりすることをしないと思います。その点でいえば、今の青少年たちは非常に不幸です。
by shirogane-kagami (2005-04-24 15:07) 

参明学士/PlaAri

銀鏡反応さん、リーダーは確かにセミが命を落としたことに責任と哀愁を感じていたように思います。実際に虫を殺すという教育はなしえないでしょうけれど、生命の価値に関する知識や考え方をきちんと教えるような機会が必要なんだと思っています。
by 参明学士/PlaAri (2005-04-24 15:40) 

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